よかったら、血液検査データをお持ち下さい!🩸
(※ちょっと今回は、難しい内容になりますが重要な知識ですので、是非最後までお読みください)
【用語説明:eGFRとは?】
「血液を腎臓で濾過(ろか)し尿を作る力を表す指標」で、「腎機能の元気度」として医師がよく見る値です。年齢、性別、Cr(クレアチニン)という血液検査の指標を用いて計算します。
【結論】
eGFRという結果をみて45以上であれば基本的には安心してメトグルコ(=メトホルミン)を内服していても問題ありません。eGFRが45未満の場合は、リスクと利益のバランスを考えている主治医に相談して考えましょう!eGFR30未満となりましたら、中止。(年齢や合併症なども考慮する必要があるので、詳しくは主治医へ相談を。あくまでも腎機能別でのメトグルコの安全性を評価した論文の結果です。)
【結論の解説】
「eGFR」は血液を腎臓で濾過する力を表す指標なのですが、血液検査結果で「eGFR 45以上であれば安全性は比較的高く、血糖降下作用により死亡率が下がり、大きな副作用は増加しない」と下記添付のメタ解析論文には記載があります。
「eGFR 30未満」とさらに腎機能が低下すると、血糖を下げる効果はあるが、血液に乳酸という酸性物質が蓄積され「乳酸アシドーシス」という、重症な状態になる可能性があるため基本的には「メトグルコは中止」となります。そのため、米国食品医薬品局のガイドラインに従い、eGFRが30 mL/min/1.73m2未満の場合にはメトホルミンの使用は避けるべきとなっています。
では、「eGFR 30-45の場合はどうするのか?」と言う疑問には、明確な答えはなく、以下の論文では今後のさらなる研究が必要とされています。ですので、患者様ごとのリスクと利益のバランスを考えながら処方する必要がありますので主治医と相談しながら、「内服する or しない」を選択することが大切かと思います。
私の場合も、「eGFR 45未満になるとメトグルコの投与量の減量を考慮し、減量も実際に行うことが多く、eGFR 30未満は中止」とします。メタ解析というもっともエビデンスレベルの高い解析方法ですらeGFR 30-45は明確な答えがないということです。主治医に相談で決定することが最適解かと思います。
メトグルコは効果が非常によい(特に肥満の患者様)ので、まずは肥満の方で重症肝障害などがある場合を除き処方します。そのことで糖尿病の値であるHbA1cと血糖値がいい状態を保つことができ、結果的にeGFR 45未満つまり腎障害になることを防げます。
腎障害になった時に怖いから、メトグルコの処方を避ける内科医がいますが、それは違うと思います。
「腎臓が元気で、メトグルコを内服してはいけない重症肝障害などがない場合は内服すべき」と思います。
糖尿病治療の権威の先生も「高齢者になると腎機能が下がることがあるからメトグルコをそもそも投与しないだとか、内服していたのにやめるというのは間違いであり、非常に少ない副作用である乳酸アシドーシスを恐れて処方をしないというのは間違っている。腎機能障害にならずに障害を終える方もいる。本質を間違えないこと。」とおっしゃっていました。
非常に稀(まれ)な「乳酸アシドーシス」という副作用を恐れてメトグルコを内服せず血糖コントロールが悪化し、腎機能障害→透析が必要になるくらいなら、早い段階で内服をしていれば、腎障害とは程遠い人生を送れます。
Orloff, J., J. Y. Min, A. Mushlin and J. Flory (2021). "Safety and effectiveness of metformin in patients with reduced renal function: A systematic review." Diabetes Obes Metab 23(9): 2035-2047.(海外の糖尿病雑誌では有名な雑誌)
なんて、勉強してみました。偉そうに書いてみました。
日々、勉強が必要だなと改めて思う今日このごろ。
みなさまと共に知識を共有できたらと思います。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
新宿内科 糖尿病・生活習慣病クリニック(新宿駅徒歩3分・西新宿駅徒歩2分)
統括院長 松谷 大輔拝
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