血圧ってそもそも、なんぞや?
高血圧の患者様は日本では増加の一途をたどっていますが、「高血圧ってそもそもどういう意味か分からない」方もいらっしゃるかと存じます。
簡単な説明ですと「血管の中を強く激しく流れる血液」が高血圧となります。
「え?それだけ?」となるかもしれません。
イメージとしては、「ホースを持ち、ホースの先端をつまんで勢いよく水を出している状態が血管の中で起こっている」と考えて下さい。
つまり、強く激しく血流が全身の血管の中をめぐっているので、血管の壁はどんどん傷がついて固くなってきます。この状態がいわゆる「動脈硬化」という状態となります。
高血圧の原因はなに?
原因は「塩分過剰、肥満、気温の低さ(冬)、ストレス、遺伝など様々な要因」が世界中の論文で報告されています。
特に、日本人は「食塩濃度の高い漬物や汁物やラーメンなどの食文化が根強く、平均して1日で10〜12gの食塩を摂取しており、世界的に見ても日本人の食塩摂取量が非常に高い」と報告されています。
カップ麺は、1食で食塩が5〜6gも入っています。日本では、食塩摂取量の多さが最大の要因と言っていいと思います。
驚くことに、ヒトが生きていく上で必要な食塩量は「1日3g未満で十分」であることが分かっています。塩分が濃度が非常に低い民族が存在することから明らかになりました。
アマゾンにはヤノマミと呼ばれる民族がいます。主食は野生動物や川魚などですが塩で味付け無し。「塩分摂取量は1日1g以下」とも言われています。
塩を食べない食生活は「無塩文化」とも呼ばれ、食材に含まれる1日1g~3gほどの塩分摂取量で生きれます。
画像を見てみると明らかに「無縁文化」の民族の血圧が低いことが分かります。
話は変わり「1日の食塩量が3gを超えると血圧が上がってくる」ことも論文で報告されています。
ですので、医師が「塩分は控えて下さい。」と言うのです。
「冬に血圧が上がりやすい」ことに関しては、みなさまは実感があるかと思います。結論から言うと、「冬に血圧値はあがる」と医学的根拠(論文)から説明できます。
私が東京慈恵医科大学 大学院で糖尿病・血圧・脂質の研究を104,601人の全国データで解析をしたところ、「12月、1月、2月の冬が最も血圧が高く」、「7月、8月の夏が最も血圧が低い」という論文を発表しました。
面白いことに、「血糖値も脂質値も、血圧値と同様の季節変動」をします。
血糖値・血圧値・脂質値が季節変動することの報告は以前からあったのですが、私は「年齢別、性別、体重別、高血圧の有無、降圧薬の有無、脂質異常症の有無、脂質改善薬の有無、喫煙の有無などの多くの因子で詳細に補正」して解析しても季節変動は存在し、「冬の血圧値・血糖値・脂質値は高い」ことを科学的に証明しました。
「Diabetes Care」という、世界でも最高峰の米国糖尿病専門医学 雑誌に2019年1月に執筆した論文が採択されたことの感動は今でも思い出します。
皆様に医学的根拠を丁寧にご説明し、最適な治療につなげることが私の仕事かと存じます。
高血圧症の診断基準は?正常値は?高血圧症の目標血圧値は?
高血圧症の診断基準
「自宅では135/85mmHg以上」で、「病院で測定した場合は緊張で血圧が上がることが多いので140/90mmHg以上」が高血圧の診断基準となります。
正常の血圧値
定義では「自宅での測定で115/75mmHg未満が正常血圧値」で、「病院での測定で120/80mmHg未満」が正常血圧値と言われております。
高血圧症になった場合の「目標の血圧値」
75歳の方や脳梗塞を経験された方は、自宅血圧で135/85mmHg未満が適切とされています。
その理由として、「高齢者の場合は血圧を下げすぎるとふらつきなどで転倒してしまう」リスクがあり、「脳梗塞を経験された方は脳血管の血圧を下げすぎると、脳の血管内の血圧が足りなくて、小さな血管がまた狭くなり脳梗塞を発症する」リスクがあります。
持病や年齢によって血圧目標値は変わります。
よって、「高血圧の目標値は完全に十人十色」となります。
目標値に関しては医師ですら、すべてを覚えることが難しいので患者様ごとに目標値をお伝えしたく存じます。
高血圧になると、どうなるの?
血管は全身の隅々まであるため「血圧が高い=臓器への負担」となります。なぜ負担かというと血管内の圧が高いと、血管にストレスをかけているため血管が固くなります。イメージとしては、元々柔らかいチューブくらいの血管だったのが、古い固いホースくらいの血管の硬さになります。
そうなりますと、血管の柔らかさが失われるので、血管が裂ける重症疾患の「大動脈解離」であったり、心臓を動かす筋肉に栄養を送る細い大事な血管が固く狭くなってしまうため「心筋梗塞や狭心症」を引き起こします。「脳梗塞・脳出血」も同じ原理です。
腎臓も血管がたくさん詰まっている臓器ですので、高血圧が継続すると「腎不全」になり最悪の場合は「透析」になる可能性もございます。
どれくらいの血圧値になったら治療が必要?
「心筋梗塞・脳梗塞・脳出血・腎不全などの重大な疾患」にならぬように「早期の受診」をおすすめ致します。
以下にあてはまる方はクリニックに受診することを強くおすすめ致します。
健康診断 | 血圧値に異常判定が出た方 |
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自宅血圧 | 約130/80mmHg以上 |
みなさまにして頂きたい習慣
一番大事なことは、「朝起きた時」と「寝る前」の同じ時間帯に毎日測定することです。
測定方法は一度覚えたら簡単です。
「朝起きてから、1時間以内に血圧測定することを目標にトイレをすませ、食事前、お薬を飲む前にリラックスしてから血圧を測定する」ことが正しい測定方法となります。
「寝る前の血圧測定は、お風呂で血圧が変動しますので入浴後1時間以上時間をあけてリラックスして測定すること」が正しい血圧測定の方法です。(※なるべくお酒を飲んでいない状況での測定が重要な一方で、お酒を飲んでいる状況でどれだけ血圧があがるかを把握することも大事となります。)
家電量販店、薬局、ネットショッピングで4,000〜5,000円前後で売っていますので「健康投資」のためにご購入がベストです。
「できれば毎日、忙しい場合は週に3日程度、お家で血圧を測定してノートや血圧アプリなどに記録すること」をおすすめ致します。
なぜなら、血圧は唯一「血液検査で判断が出来ない値」だからです。
よく、血圧を測ってから「急いで病院きちゃったから高く血圧がでちゃった!」とおっしゃり、血圧値が160/100mmHgくらいの高い血圧値の場合があります。急いで来院されて、心臓がバクバクしているので血圧は上がります。
そして病院というやや緊張する場所での血圧測定は「白衣高血圧」といい、これも一時的に血圧が上昇する要因となります。
実はこれらは上記に記載した通り「高血圧の診断基準を満たし、高血圧症の診断」となります。
なぜならば「高血圧が無い方は、たとえ急いでも、緊張していても血圧は160/100mmHgまで上昇しない」からです。
最も大事な血圧値データは「人生で最も長くリラックスして時間を過ごす家での血圧値」です。
病院の滞在時間は短いです。実際に「病院で血圧が高いことも良くないこと」です。しかし、「病院の血圧値だけで降圧薬で治療することは間違っています」
ですので、必ず私は患者様のご自宅の血圧のデータをチェックします。
皆様には「いつも慣れている落ち着く空間で、できる限り血圧を測定」して頂きたく存じます。
「家の血圧値を参考にして血圧値を調節することが、医学的に正しい治療」です。
健康診断や血圧高めの方へメッセージ
みなさまに「高血圧症の怖さ」を知って頂きたく長文となってしまいましたが、高血圧症の放置は、「将来想像以上に合併症で苦しむ」ことになります。
高血圧症の患者様、そしてご家族の幸せのためにも「早めの受診」を強くおすすめ致します。
新宿内科 糖尿病・生活習慣病クリニック(新宿駅徒歩3分・西新宿駅徒歩2分)
統括院長 松谷 大輔拝
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