糖尿病内科医の備忘録

〜心筋梗塞・脳梗塞にならない知識🖋を届ける〜

【脂質・LDLコレステロール・中性脂肪高めのスルーが確実に招く悲劇(基本編)】

若くして「急性心筋梗塞」でお亡くなりなる方は意外と多いです。おそらく、生まれつき脂質異常症で、更に最もLDLコレステロール値が高い「家族性高コレステロール血症」であった可能性は高いと思います。(あくまでも推測となります。)

 脂質異常症(≒高脂血症、高LDLコレステロール血症、脂質高め、中性脂肪高め)について甘く見ている方は多いのではないでしょうか?
 脂質高めの判定が健康診断で出てもスルーして病院やクリニックを受診しないことは患者自身と家族の幸せを想像以上に崩壊させます。
 

今回のテーマ:脂質異常症(≒高脂血症、高LDLコレステロール血症、脂質高め、中性脂肪高め)について】

 意外と脂質異常症の病態を詳細に説明できる医師は「医師でも少ない」です。

 

 脂質は医師が何回勉強しても、理解が難しい「非常に難解な分野」なのです。

 

 これから、説明する内容もなるべく噛み砕いているのですが、LDLコレステロール高めや中性脂肪高めのスルー」がどれだけ危険なことかを理解できたらと幸いです。

 

 「すぐにクリニックで脂質の値を下げないと!」と考えていただけると信じています。

 

 

 

 

 

図:一番右の血管がLDLコレステロール高めと中性脂肪高めを放置した血管
一目瞭然で、心臓の細い血管や脳の細い血管が詰まることは予想できます。

 

 

 

 

 

 脂質異常症は、血液中の脂質(=脂肪やコレステロールなどの脂溶性物質の総称)のバランスが正常ではない状態を指します。

 

 

 主な脂質異常症の一つとして非常に重要なのは「LDLコレステロール(低密度リポタンパク質コレステロール)の高値」です。

 

 

【LDLコレステロールの働き】

LDLコレステロールの良い働き
 

 まずはLDLコレステロールの良い点を箇条書きで示します。

●脂質代謝への関与: LDLコレステロールは脂質代謝において重要な役割を果たします。体内での脂質の輸送や蓄積に関与し、エネルギーの供給や細胞の機能に必要な脂質を適切に調節します。

 

 

 

 

LDLコレステロールはエネルギーを全身に運搬している。

 

 

 

 

●ホルモン合成: LDLコレステロール「体内で重要なホルモンの合成に必要な材料」となります。

 例えば、性ホルモン(エストロゲンやテストステロン)副腎皮質ホルモン(コルチゾールなど)の生成にはLDLコレステロールが必要です。胆汁酸も生成します。

 

 

 

 

コレステロールはストレス対抗ホルモンである副腎皮質ホルモンを生成する

 

 

 

 

●細胞膜構成: LDLコレステロール細胞膜の構成要素として重要な役割を果たします。細胞膜は細胞の保護や機能を維持するために不可欠なものであり、LDLコレステロールはその構成要素として必要です。

 

 

 

 

LDLコレステロールは細胞の膜の成分として大切

 

 

 

 

●脳の機能: 脳は高いエネルギー要求を持つ器官であり、正常な機能には十分なコレステロールが必要です。LDLコレステロール神経伝達物質の合成にも関与します。特に脳内での神経伝達物質であるセロトニンの生成にはLDLコレステロールが必要とされています。セロトニンは気分や睡眠、食欲などの調節に関与し、心理的な健康に重要な役割を果たします。

 

 

 

 

脳の機能には脳内にコレステロールが必要!

 

 

 

 

●免疫応答: LDLコレステロールは免疫応答に関与することがあります。炎症が生じると、血管内皮細胞がLDLコレステロールを取り込み、炎症部位に運搬します。これは免疫応答に関与し、傷ついた組織の修復に役立つ場合があります。

 

 

 「は?LDLコレステロール結構良い働きしてるでしょ!!」と思ったと思いますが、上記の働きをするためにはそこまでLDLコレステロールを必要としません!!!

 

2大LDLコレステロールの超悪い働き

 LDLコレステロールが過剰に増加すると、動脈壁にプラーク(図:①)を形成するリスクが高まります。その結果、血管が狭くなってきます。

 

 その後、プラークが剥がれて心臓・脳の細い血管にプラークが詰まったり動脈硬化を引き起こし心筋梗塞(図:②)や脳卒中(図:③)などの重篤な病気のリスクを増加させます。

 

 

 

 

図①

LDLコレステロールにより血管の内側に石のように硬いプラークという物質が生成されます。

 

 

 

 

 

図②

心臓の筋肉に栄養を送る大事な動脈の内側にプラークが沈着して血管がつまり、心臓の筋肉が壊死します。これが、「急性心筋梗塞」です。予後はよくありません。

 

 

 

 

図③

LDLコレステロールの高値は脳卒中も引き起こす…!🔥

 

 

 

 

脂質異常症「≒LDLコレステロール高め、高脂血症)の悪い点

 

 まとめると、「LDLコレステロール高値」には以下のような「大きな欠点」があります。「人生を狂わせる」のです!

 

●高濃度でLDLコレステロールが血管内に存在すると、血管壁に沈着しやすくなるため、動脈硬化の原因となる可能性があります。

 

 

●酸化したLDLコレステロールは、炎症反応を引き起こし、動脈壁の損傷を促進する可能性があります。

 

 

 

 

LDLコレステロールは、黄色い部分のプラークが作られ、動脈硬化を引き起こす

 

 


 

 したがって、これまでの説明をまとめますと、LDLコレステロールは大切な役割を果たすので、適切な範囲でのLDLコレステロールの存在は重要です。しかし、「LDLコレステロールの量は最低限で十分」とされています。

 

 

 ですので、「Lower the better、つまりLDLコレステロールは低ければ低いほどよい!」と言われています。

 

 

 

 

メタ解析=最強の論文。たくさんの論文を更に解析する最高の解析方法
→LDLコレステロールは「Lower the better」とメタ解析で判明しています。
つまり、低ければ低いほど心筋梗塞脳卒中などの心血管イベントが少ないです。


 

 言い換えると、当然ながらLDLコレステロール高値(脂質異常症高脂血症)では心筋梗塞脳梗塞脳出血などの重篤疾患が増加する可能性があります。

 

 

治療によってLDLコレステロールを低下させる必要があります。

 

 

 ご存知の通り「脂質異常症」の治療や予防には、適切な食事管理、適度な運動、必要に応じた薬物療法が必要になることが多いです。

 

 

 

 健康診断や病院で異常値が出た場合は「放置・スルーせず」、必ず受診することが大切となります。

 

 

 高血圧と同じで無症状の「サイレントキラーの重大疾患」です。

 

 

 早めに治療することで重大疾患とは無縁の人生を送ることができるので、早めの受診をおすすめします。いや、受診してください。

 

 

 医師の感覚として「血圧・脂質異常の受診率が低い」ように感じます。

 

 

 患者様自身、大事な家族のために重大疾患にならぬよう早めから治療することが最重要となります。

家族全員で「健康寿命を長くすること」が一番皆が幸せになるのです。

 

 

 「症状がないからクリニックに行かない」のではなく、「症状がないうちからクリニックに行く」が正しい考えです。

 

 

 将来苦しむことになりますので、「診などで異常値がでたら必ず受診!」

 

 

 よろしくお願い申し上げます。

 

 

 肩の力を抜いてご来院ください。怖いことはありません。

 

 

 脂質異常症(≒LDLコレステロール高値、高脂血症)の治療をしたら得なことしかない」という論文は無数にあります。

 

 

次回の「脂質異常症」特集では、「超完璧な解析方法のメタ解析という方法を用いたLDLコレステロール低下の効果」論文をご紹介いたします。

(論文名:Intensive LDL cholesterol-lowering treatment beyond current recommendations for the prevention of major vascular events- a systematic review and meta-analysis of randomised trials including 327,037 participants. 「Meta-Analysis」 Lancet Diabetes Endocrinol. 2020 Jan;8(1):36-49.)

 

 

 ぜひ、楽しみにしていてください。勇気を持って脂質のお薬を飲めるようになります。素晴らしい論文です。

 

 

 まだまだ、お伝えしたいことが山程あります。

 

 

 変なYoutubeや医師でもない論文をしっかりと読めないインフルエンサーの動画・ブログは見ないでください。

 

 

 医師から見て、はっきり言って「有害」です。

 

 

 良い論文、正しい情報を少しずつ皆様にお伝えできたらな、と思います。

 

 

 今後とも宜しくお願いいたします。

 

 

 

新宿内科 糖尿病・生活習慣病クリニック(新宿駅徒歩3分・西新宿駅徒歩2分)

統括院長 松谷 大輔拝

 

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