糖尿病内科医の備忘録

〜心筋梗塞・脳梗塞にならない知識🖋を届ける〜

【上級者向け:インスリン作用から紐解く糖尿病合併症の分子機構(FoxOの制御の重要性)土屋恭一郎先生の総説】

 今回のブログは無視しても良いです。医学の進歩を常に勉強するための糖尿病を専門とする医師の備忘録として、記録させてください。土屋恭一郎先生とういう糖尿病会の権威の大先生の総説となります。

 

「土屋恭一郎先生*1は日本の糖尿病の世界の権威の先生」です。

 

 大先生が書いた総説となります。

 

 いつも通り結論から。

 

 激ムズなのでスルーしても問題ないです。

 

 糖尿病内科医としては日々、分子レベルの勉強を知識としてつけておくことも大切なのです。

 

 

【結論①】「FoxOの活性制御は、動脈硬化をはじめとした多くの糖尿病合併症抑制の可能性を有する」

 糖尿病とは、インスリン抵抗性という状態を伴う病気」です。

 

 この状態では、「体が適切にインスリンを利用することができず、血糖値が上昇」します。

 

 しかし、インスリンの作用を改善することは、血糖値だけでなく、動脈硬化などの糖尿病の合併症を抑制するのにも役立つ」と考えられています。

 

 合併症に応じたアプローチとして、「特定の組織や細胞に対して選択的にインスリンの作用を働かせる方法」や、FoxOという種々の細胞機能を制御する多機能な分子の活性制御糖尿病の合併症を克服するための可能性を秘めています。

 

 繰り返しとなりますが、「特定の組織や細胞に対して効果的なインスリンの作用の改善や、FoxOの活性制御を行うことで、糖尿病の合併症を抑制することができる可能性がある」のです。

 

 つまり「体内のFoxOが複数の動脈硬化カニズムを一元的に制御する鍵因子であることが示されており」、そこで、そのFoxOを上手く活性制御することができれば、動脈硬化や合併症を更に良くすることができるかもしれない」ということです。

 

 このような細かな分子レベルの研究を積み重ねることで、人類の寿命を伸ばす素晴らしい「お薬」が誕生するのです。

 

 これからの更なる研究が待たれますが、FoxOを用いた動脈硬化を制御する「お薬」ができると更に糖尿病患者様の健康寿命の延長や合併症の抑制に繋がるかもしれません。

 

 

 

【結論②】「healthy adipose expansion(健康的な脂肪増加)と糖尿病合併症」

 この研究では、高脂肪な食事を与えられたマウスにSGLT2阻害薬のスーグラ®を試しました。

 

 興味深い結果として、「スーグラ®はマウスの体重には影響を与えず、肝臓に蓄積される脂肪を減らしました。」しかし、「マウスはスーグラ®を飲むと食欲が増え、精巣周りの脂肪が増えました。肝臓と精巣周りの脂肪組織の重さは逆の関係にあり、スーグラ®は脂肪組織内の脂肪を増やす一方で、肝臓に異常な脂肪が蓄積するのを抑える可能性が示唆」されました。

 

 さらに、「スーグラ®によって増えた脂肪組織は、脂肪細胞が大きくなっても、炎症を抑え、インスリンの効き方を改善する」という特徴がありました。

 

 同様の結果は「NASH(非アルコール性脂肪性肝疾患)」モデルマウスでも見られ、SGLT2阻害薬のカナグル®は健康的な脂肪の増加を促し、肝臓の脂肪蓄積、炎症、線維化、そして癌の発生を抑える」ことがわかりました。

 

 また、「マウスの研究では、SGLT2阻害薬は血管や腎臓周りの脂肪組織にも健康的な脂肪の増加をもたらし、アディポカインの分泌動態の変化を介して血管リモデリング、糖尿病性腎臓病を抑える可能性」が示されました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただし、「人間におけるSGLT2阻害薬による健康的な脂肪の増加についてはまだ十分な研究がなく、今後は体脂肪量が減らない場合における脂肪組織の詳しい解析など、さらなる研究が必要」です。

 

www.jstage.jst.go.jp

 

 

 かなり今回はマニアック(難解)でしたが、たまにはこのような備忘録を発信させてください。

 

 

 現代医学の著しい進歩を「分子レベル」再生医療レベル」で皆様にお伝えすることも大切だと思っています。

 

 引き続き勉強しようと思います🔥

 

新宿内科 糖尿病・生活習慣病クリニック(新宿駅徒歩3分・西新宿駅徒歩2分)

統括院長 松谷 大輔拝

 

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*1:山梨大学 大学院 総合研究部 医学域 臨床医学系(糖尿病・内分泌内科学) 

 

教授

ツチヤ キョウイチロウ

土屋 恭一郎

 

その他の所属・職名

  1. 医学部 附属病院糖尿病・内分泌内科学診療科長

 

経歴

  1. 東京医科歯科大学 医学部附属病院研修医2001/06/01-2002/05/31
  2. 東京都立墨東病院研修医2002/06/01-2003/05/31
  3. 長野県厚生連北信総合病院内科医員2003/06/01-2004/03/31
  4. 東京医科歯科大学大学院分子内分泌内科学メディカルフェロー2007/04/01-2007/11/30
  5. 東京医科歯科大学医学部附属病院内分泌・代謝内科医員2007/12/01-2009/03/31
  6. コロンビア大学医学部ポストドクトラルリサーチフェロー2009/04/01-2013/03/31
  7. 日本学術振興会海外特別研究員2011/04/01-2013/03/31
  8. 東京医科歯科大学医学部附属病院糖尿病・内分泌・代謝内科助教2013/04/01-2017/03/31
  9. 公益財団法人 山梨厚生会 山梨厚生病院糖尿病内科医員2017/04/01-2018/03/31
  10. 山梨大学医学部内科学講座第3教室講師2018/04/01-2021/03/31
  11. 山梨大学医学部内科学講座 糖尿病・内分泌内科学教室講師2021/04/01

 

研究テーマ

・内分泌・代謝疾患における血管障害発症の分子機構の解明と医学応用

・糖・脂質代謝異常における肝脂肪蓄積の分子機構の解明と医学応用

 

著書

  1. 副腎および関連疾患 I Bartter症候群、Gitelman症候群 サイアザイド負荷試験、フロセミ負荷試験土屋恭一郎、北村健一郎第5章診断と治療社2019/05
  2. 肥満症・メタボリックシンドローム(成因・病態)土屋恭一郎、小川佳宏3章西村書店2015/05

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論文

  1. 研究論文(学術雑誌)共著FOXO1 cooperates with C/EBPδ and ATF4 to regulate skeletal muscle atrophy transcriptional program during fastingFASEB JOURNAL36/ 2, e221522022/020892-663810.1096/fj.202101385RR
  2. 研究論文(学術雑誌)共著Resection of Gastric Cancer Remitted Anti-signal Recognition Particle MyopathyINTERNAL MEDICINE2022/02/010918-291810.2169/internalmedicine.9055-21
  3. 研究論文(学術雑誌)共著Intelectin1 ameliorates macrophage activation via inhibiting the nuclear factor kappa B pathwayENDOCRINE JOURNAL2021/12/030918-895910.1507/endocrj.EJ21-0438
  4. 研究論文(学術雑誌)共著Association of glycated hemoglobin at early stage of pregnancy with the risk of gestational diabetes mellitus among non-diabetic women in Japan: The Japan Environment and Children’s Study (JECS)Journal of Diabetes Investigation2021/10/2210.1111/jdi.13701
  5. 研究論文(学術雑誌)共著A clinical case of insulinoma presenting postprandial hypoglycemia in a patient with a history of gastric bypass surgeryINTERNAL MEDICINE2021/10/1210.2169/internalmedicine.7428-21

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受賞

  1. 日本内分泌学会 第42回研究奨励賞2022/06
  2. 2022年度学会賞(リリー賞)2022/05
  3. 日本肥満学会 学術奨励賞2021/05
  4. 日本心血管内分泌代謝学会 第21回高峰譲吉研究奨励賞2017/05
  5. 日本心血管内分泌代謝学会 第21回高峰譲吉研究奨励賞2017/05

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