糖尿病内科医の備忘録

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【2型糖尿病に「AIを活用した食事管理の有効性」は!?🔥(勉強会)Diabetes Care 2023年(世界トップクラスの糖尿病専門論文雑誌)】

AIが猛威を奮っていることは、言うまでもありません。

今回は2型糖尿病を対象としてAIを活用した食事管理」で「48週間(約1年間)でHbA1cが低下したのか!?」を特集したいと思います。

 

【論文タイトル】

「An Integrated Digital Health Care Platform for Diabetes Management With AI-Based Dietary Management: 48-Week Results From a Randomized Controlled Trial」

Diabetes Care 2023;46(5):959–966, FEBRUARY 23 2023

 

diabetesjournals.org

 

 

AIは医療の現場でも活躍をしてきている。
例:胸部レントゲン検査ではAIによる判別も実用化されている。

 

「結論」より記載します。

 

【結論】

 2型糖尿病を有する成人において、AIで食事管理は「良い血糖コントロール「より大きな体重減少に結びつきました。」

 

 さて、どのような方法で行われたのか?普段から論文を読んでいる人は気になってきます。

 

 方法を解説します。

 

【方法】

 この研究は「オープンラベルランダム化比較試験」では、2型糖尿病を有する肥満、または過体重の成人を対象に48週間で行われました。

用語説明:「オープンラベル」

 医療スタッフや患者様本人が「どのような治療を受けているのか知っている状態で行われる試験」のことです。

 

 欠点としては、治療法を比較するとき、「患者さんや医療スタッフがどちらの治療を受けているのかを知っていると、治療結果に影響を与えること」があります。

 

オープンラベル
「患者様と医師がどのような治療を行っているかを知っている試験方法」

 明らかに患者様と医師が「どのような治療をされているか」がわかってしまう場合に「オープンラベルの研究方法」が取られます。

 

 例えば「明らかに尿量が増えるお薬の研究。これではいずれ患者様にはバレてしまいます。」といった例です。

 

 方法の続きを説明いたします。

 

 2型糖尿病の患者様は「1:1:1の割合で3つのグループ」に「ランダム(良い解析方法)」に割り当てられました。

 「グループA」=従来の糖尿病管理を受けました。

 「グループB」= AIで食事管理受けました。

 「グループC」= 医療スタッフからのフィードバックを受けつつ、断続的な個別の血糖モニタリングを行いました。(→しっかりと人と人で話し合って、濃厚に指導されました。)

グループB:AIの食事指導システムを受けた2型糖尿病の郡

 

グループC:患者様に医師・スタッフが丁寧に指導をうけた2型糖尿病の郡


 

*1主要評価項目

「グループA(従来の糖尿病管理)「グループBAIで食事管理を受けた)の間での24週間でのHbA1cの変化の差。

 

 この論文は「研究で一番何を知りたかったのか?」というと「グループA(従来の糖尿病管理)」V.S「グループB(AIで食事管理を受けた)」のどっちがデータ良くなるか?」です。

 

【二次評価項目】

最初から48週間までの、HbA1cの変化、およびフォローアップ期間中の体重変化がどれくらいだったのか。

 

 ここからは、詳細な結果を記載しますが、興味ある方だけお読みになってください。

 

 

【結果】


 合計294人の参加者が「ランダム(大事)」に以下の人数にグループ化されました。

・グループA(従来の糖尿病管理)(n = 99)

・グループB(AIで食事管理を受けた)(n = 97)

・グループC(医療スタッフからの手厚い食事指導を受けた)

(n = 98)

 

 

主要評価項目

グループB(AIで食事管理を受けた郡)

・24週間までHbA1cが−0.32 ± 0.58%減少⏬

・48週間までHbA1cが−0.28 ± 0.56%減少⏬

 

 

グループC(医療スタッフからのフィードバックを受けつつ、断続的な個別の血糖モニタリングを行った郡)

・24週間までHbA1cが−0.49 ± 0.57%減少⏬

・48週間までHbA1cが−0.44 ± 0.62%減少⏬

 

 

グループA(従来の糖尿病管理)

・24週間までHbA1cが−0.06 ± 0.61%減少⏬

・48週間までHbA1cが+0.07 ± 0.78%増加”⏫”

 

 

 上記の通り、主要評価項目である「グループB(AIで食事管理を受けた)」は「グループA:従来の糖尿病管理」よりも有意な減少が見られました。

グラフの解説
・グループB(AIで食事管理を受けた郡)& グループA(医療スタッフから濃厚な指導を受けた郡)が有意差を持ってHbA1cが低下している。



 

二次評価項目

「グループB(AIで食事管理を受けた郡)」および「グループC(医療スタッフからのフィードバックを受けつつ、断続的な個別の血糖モニタリングを行った郡)」は、24週間までの体重減少がグループA(従来の糖尿病管理)よりも大きかった!

 

 →つまり、「AIによる食事指導」か「人による濃厚な食事指導」が「従来の糖尿病管理(通常の指導) 」よりもデータは改善した!ということ。

 

 当たり前ですね…。

 

②グループC(医療スタッフからの手厚い指導は48週間までの体重減少も示しました。

 

 →つまり、「人からの濃厚な指導がHbA1cも体重も改善した!」ということです。

 

AIは、医療スタッフの食事指導に勝てない可能性

 やはり、AIでもいいけれども人から直接指導を受けたほうが人間という生き物は「こころに響く」ということかと思います。

 

 「医師がAIに最も仕事を取られない職業のうちの一つである」という事実はそこにあると思います。

 

医療系はAIには難しい分野の可能性が高い

ソース:「AIに代替される仕事/されない仕事」について|ミドルの転職

 

 私自身も「きちんと患者様が納得するまでご説明をし、指導することが最も効果があること」を実臨床で経験しています。

 

 なーーーーんて、勉強してみました。

 

 でも面白い論文でした。

 

 また、自己満足勉強会を続けたいと思います。

 

 引き続きよろしくお願いいたします。

 

新宿内科 糖尿病・生活習慣病クリニック(新宿駅徒歩3分・西新宿駅徒歩2分)

統括院長 松谷 大輔拝

 

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*1:【主要評価項目】:この論文でなにを見るのか?ということ。論文では一つしか研究前に評価する項目を予め決定しないといけないのです。