糖尿病内科医の備忘録

〜心筋梗塞・脳梗塞にならない知識🖋を届ける〜

【勉強会:フォシーガ(=ダパグリフロジン)が心臓機能が保たれている心不全患者(糖尿病の有無を問わない)に対して心不全入院と死亡率を低下させるか?DELIVER 試験 2022年9月号(ニューイングランドジャーナル:世界トップクラスの医学論文雑誌)】

さて、「フォシーガ」という糖尿病のお薬を服用している方々の中には、糖尿病(1型、2型糖尿病)や慢性心不全、慢性腎臓病を抱える方が増えています。

 

 「あれ?糖尿病の薬なのに、なぜ糖尿病ではない慢性心不全の患者にも投与できるのでしょうか?」

 「添付文書には慢性心不全が適応疾患に含まれているの?なんで!?」と疑問に思われる方もいるかと思います。その疑問の根拠となる論文をご紹介します。

 

 今回のテーマは「糖尿病の有無に関わらず、糖尿病のお薬であるフォシーガが心不全入院または死亡率を減らすことができるのか?」

 

 

 

 

フォシーガ5mgと10mg



 

 

 さぁ、健康寿命(足腰元気で寝たきりにならないような人生)を延長させるために学びましょう!(ガリガリ🖊📖)

 

 結論から申し上げますと、

 

「フォシーガ10mg1日1回は、心臓の機能がほぼ保たれている慢性心不全患者の心不全の悪化や心血管死を低下させる効果がある」

という結果が得られました。

 

 素晴らしい結果ですね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究の方法について簡単に説明します。

【対象者】
糖尿病の有無を問わない、心臓の機能がほぼ保たれている慢性心不全の患者6,263例(十分な数!!!)

 

【方法】
これまでの薬や治療を継続しながら、フォシーガ(1日1回、10 mg)を投与するグループと見た目は全く同じが偽物の薬(ただの粉)をランダムに振り分けた対照群に分けました。

 

【調査項目】
心不全の悪化や心血管死の減少の有無について調査

 

 

この研究は「二重盲検ランダム化比較試験」という、非常に高いレベルの研究方法を採用しています。

 

 

 

 

二重盲検ランダム化比較試験は最高やでー!!!

 

 

 

 

 改めて説明しますが、「二重盲検ランダム化比較試験」での「二重盲検」とは、患者さんに「本物の薬を処方しているのか」「偽物の薬(ただの粉)を処方しているのか」が、患者さんも、医師・医療スタッフには全くわからない状態で行われる試験です。

 

 誰もが本物か偽物かを知りません。

 

 本物の薬(今回の論文ではフォシーガ10mg)では副作用もほとんどなく、一部の患者さんは2週間程度の間、尿量が少し増える程度で気づかないことがほとんどでしょう。

 

 偽物の粉でも、「食事運動療法」を頑張る患者さんは血糖値が下がります。

 

 「本物の薬を処方していますよ!」と患者さんに伝えてしまうと、患者さんは「この研究に参加しているから期待に応えなければ!」と思い、食事や運動療法にも頑張ってしまい、薬の効果なのか、食事や運動療法の効果なのか分からなくなってしまうため、このような方法が取られています。

 

 また、「ランダム化」というのは、パソコンで自動的に番号を割り振り、本物の薬を出すグループと偽物の薬を出すグループを決定します。

 

 では、なぜこのような方法を取るのでしょうか?

 

 例えば、医師が「この患者さんは食事や運動療法を頑張りそうな努力家だから、本物の薬を投与して良い結果を出そう!」という戦略を無意識的または意図的に取ってしまう可能性があるからです。

 

 そのため、「二重盲検ランダム化比較試験」は、実際の結果に近い結果が得られると言えます。

 

 ただし、研究には「絶対」は存在しません。

 

 しかし、この論文は信頼性の高いものだと思います。

 

 注意点としては、日本では通常は維持量として5mg1日1回が推奨されています。「効果不十分の場合には10mgに増量可能」と記載されていますが、具体的にどのような効果が不十分なのかは明示されていません。糖尿病や慢性心不全の悪化が続いている場合なども考えられます。

 

 結論をもう一度言います。

 

「糖尿病の有無に関わらず、フォシーガ10mgを服用している心機能がほぼ正常な慢性心不全の患者において、急性心不全による入院または死亡率の複合的なリスクが低下しました。」

 この結論が得られました。

 

 やったー!!!

 

 

 

 

(2回目)

 

 

 

 

(3回目)



 

 

 糖尿病の有無に関わらず、一般的な慢性心不全の治療を受けている方々に対して、「フォシーガ」や「ジャディアンス」を投与しない理由がますます少なくなってきていると思われます。

 SGLT2阻害薬についてまとめると、これらの薬は尿から糖質を排出することで血糖値を下げる効果があります。また、体重減少、血圧の低下、尿酸の低下、肝機能や腎機能の保護、心臓への負担の軽減などの効果もあります。

 

以下に各薬の適応疾患をまとめました。

 

主なSGLT2阻害薬

【フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)】
適応疾患:1型糖尿病2型糖尿病、慢性心不全(糖尿病の有無に関わらず)、慢性腎不全(糖尿病の有無に関わらず)

 

【ジャディアンス(一般名:エンパグリフロジン)】
適応疾患:2型糖尿病、慢性心不全(糖尿病の有無に関わらず)
※近々、慢性腎不全(糖尿病の有無に関わらず)が適応疾患に追加予定です。



 

 ってことで、またまた偉そうに論文のまとめをしてみました🔥

 

 患者様の健康寿命を伸ばすために、常日頃から知識のアップデートは必要。

 

 開業準備で非常に忙しかったけど、勉強は欠かせない。

 

 医療の勉強のみならず、実は経営的な勉強も必要…。

 

 一生勉強!!!

 

 一生青春、これは…。

 

 ではまた、勉強会ブログ上げます!

 

 引き続きよろしくお願い申し上げます!

 

新宿内科 糖尿病・生活習慣病クリニック(新宿駅徒歩3分・西新宿駅徒歩2分)

統括院長 松谷 大輔拝

 

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